皆さんに知ってほしい「ASUS」というマイノリティ


先日、小さな展覧会に行ってきた。定期開催ではあるが、毎回都心の薄暗いテナントを借り、じつにマイナーでニッチなコンテンツを取り扱っているものだ。


特に今回は良い場所が取れず、人ひとり暮らすのにもちょっと狭いくらいの、さながら築ウン十年のボロアパートとでも言うかのような激小激安レンタルスペースに私は押し込まれた。入り口に老舗のクモの巣、カンカンカンと音を立てる鉄の階段、付近の飲食店で温められた息苦しいビル風……そしてこのテナントには、エレベーターが無かった。


毎回場所を取るだけでひと苦労だなあ、このまま何回も続けられるのかなあ、もしかして今回で最後だったりして! などと考えていたら、程なくして入り口の方でスタッフの謝る声が聞こえた。後ろを振り返ると、車椅子に乗った男性とその介助人にスタッフが頭を下げている。


なるほど。


こういう時、マイノリティ(社会的少数者)に回ると苦労が多い。いや、いつだって苦労は多いのだが、公共空間や食事場など一定の意識や配慮がなされている場所が増えているのに対して、そうでない場所は未だに彼らへの対応が上手く行き届いていない印象がある。


今回はそういう類いの話だ。


みんなに打ち明けるのは辛いけど、この場を借りて激白いたします。


実は私……ASUSなんです。


皆さんに知ってほしい「ASUS」というマイノリティ


知ってる? 格安スマホ。

おそらく、名前くらいは聞いたことがあるだろう。

その名の通り、iPhoneやAndroidの高めの機種と比べて性能は落ちる代わりに安く手に入るスマートフォンのこと。


その中でもこちらの台湾製格安スマホASUS(エイスース)は安かろう悪かろうに全てを注いだ一品。マジで2万とかで買える超・格安スマホだ。

そして今、この超格安ボロボロウルトラ安価安価安価のシューリンガンASUSくんは、最近何かと話題のマイノリティとして生きることの辛さを簡単に体験できる非常に意義深い商品としても注目を浴びている。


①どこに行っても、修理してもらえない。ASUS持ちは医者も頭を抱える「難病」

ASUSはもともとノートPCを扱っているブランドで、Zenfone(ゼンフォン)シリーズに代表されるスマートフォン機種は日本ではポピュラーではない。それゆえ液晶にヒビが入ったり一部機能に不具合が見つかったとき、街の携帯修理屋では修理してもらえないという大きな問題がある。

筆者のASUSもクソ落としまくったせいでバッキバキなのだが、大都市の携帯修理屋を訪れても対応しているのは基本的にiPhoneのみ。Androidや格安スマホに対応しているお店に行ってもASUSはまず相手にしてもらえない

ネットでの満足度が高い有名な修理屋の店員は「今は同じ格安スマホでもみんなxiaomiやOPPOに流れてるから、ASUSに対応してるところはもう殆ど無くてね……」と語った。嘘つけ、昔から無かっただろ!

「持っている人が少ないから」という理由で対応を断られるのは、町のお医者さんに「珍しい病気だからうちでは治せない」と言われるようなものである。「あそこでなら治せるかも」と病院をたらい回しにされたり、「とりあえずお薬出しときますね」と何の意味もない診察料だけ請求されたりということもASUSなら同様に起こりうる。修理に苦しむASUSユーザーは、難病に苦しむ方々や戸籍・身分のせいで治療を受けられない在日外国人コミュニティに似たものがある。

(格安スマホのヒビ割れ画像を拝借しようとと思い「携帯 画面割れ」で調べたところ見事に「携帯=iPhone」だったのが面白かったので共有しておく)



②え、iPhoneじゃないの? 遍くAndroidユーザーに送られる冷たい「視線」

そもそもAndroidユーザーというだけで軽くマイノリティである。性能うんぬんの話ではなく、単純にiPhoneを使っている人の方が多いというだけでAndroidユーザーが不利益を被る場面は少なくない。

出先で携帯の充電が切れそうになった時、誰かから充電器を借りたくても、100パーセントの好意から差し出される端子は決まってiPhone専用。「あっ、ごめん、俺、Androidだから……」なんだよiPhone買えよー、なんて言ってもらえる間はまだ良い。「そっか、なんかごめん……」なんて顔をされた日には、マイノリティに生まれた自分を心の底から恨むことになるだろう。だいたいGalaxyやXperiaならともかく、格安スマホを買う人種で「手が届くなら当然iPhoneが欲しい」と思っている人は決して少なくないのだ。そういうのが買えないから仕方なく買っているだけ。

上の段落で許したばかりだが「iPhone買えばいいじゃん」という発言も配慮に欠ける。ツイッターみたいなことを言って申し訳ないが、あなたは鬱病の人間に「外出て運動でもすればいいじゃん」と言えるのか。それができたらどれほど幸せなことか。恵まれてるあなたには分からんでしょうねぇ!


とはいえAndroid自体は、少数派であるということを除けば十分な性能が揃っているとも言える。実際、「iPhoneは無駄に高い」という声もよく耳にする。使わない機能や見た目重視のデザインで高くつく割に、最近はEスポーツでもやらない限りAndroidと大して性能に差がないというのも事実である。こちらに、AndroidとiPhoneの違いを現した風刺画で有名なものがある。見た目より質を重視するのは商品選びの基本である。

ちなみにASUSも描いてみました↓

③進まぬ法整備……カギはASUS自身が「差別」とどう向き合うか

LGBT、ADHD、そして今回のASUS。世間には”多くの”マイノリティが存在する。それゆえに社会全体でその全てをカバーするのには時間が掛かる。問題を改善するカギはやはり、当事者であるASUSユーザー自身がこのハンディキャップとどう向き合うかである。しかし残念ながらASUSユーザーには、パラリンピック選手やLGBTタレントのように真正面からそれを乗り越えていった人物がまだいない。現状、ASUSを克服する一番の方法は、iPhoneを買うことなのだ。

(見つけた中での最低画質を使用しています)


たかだか携帯電話の規格ごときで不謹慎だと思う人もいるだろう。だが私はASUSを持っていることの不便さの中に、「少数派であるというだけで不当に差別を受ける」ことの辛さや理不尽さを確かに感じ取った。これを生まれながらに、自分では選べない運命の中で背負っているマイノリティの方々に心から敬意を払うと同時に、迅速な法整備とまではいかなくとも、この星に暮らす我々市民が彼らの状況を十分に理解し、お互い尊重し合える世の中が実現することを願ってやまない。


※終始ASUSの格安スマホをバカにしてしまったが、ちゃんと機能するし、写真も綺麗だし、iPhoneを持て余し気味の方にはとてもオススメです。最近もあまり格安でない機種のZenfone6が発表されて話題を呼んでいます。スマホ買い替えの際にはぜひご検討ください。淫夢動画も快適に見れるしな。イキスギィ!

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