ムカデ社会

先生が教室に入ってきた。
 
先生は前から国語・理科・社会の順番に繋がれている。

僕らは急いで席に戻る。

チャイムが鳴り授業が始まる。

今日は苦手な理科の授業を受ける。

苦手な事から逃げてばかりではいられないからだ。

耳に埋め込まれている受信機を理科の先生の周波数と合わせる。

どうやら今日は解剖学についての授業らしい。

グロテスクなのは得意じゃない。

先生が目の前の国語の先生の背中をメスで解剖していく。

痛そうで思わず目を背ける。

「ちゃんとじゅぎょううけなきゃダメだよ」
隣の青ちゃんが話しかけてきた。

「せんせーだってイタいのがまんしてくれてるんだから」

青ちゃんは優しい。

ボクは青ちゃんのそういうところが好きだ。

青ちゃんに嫌われたくないから目線を戻す。

国語の先生の血で床がいっぱいになっている。

僕の名前と同じ色。

友達が何人か帰っていく。

国語の授業が終わったからだって。

国語の先生はもう動かなくなっちゃったらしい。

理科の先生は泣いていた。

包帯で顔は隠れていたけど多分泣いていたと思う。

大人は大変だなと僕は思った。

青ちゃんは笑っていた。

笑顔もかわいいな。

大人になったら青ちゃんとつながりたいな。

「こくごのせんせーがうごかなくなったらりかのせんせーもしんじゃうの。」

青ちゃんがそう教えてくれた。

そんな気はしていた。

僕はちょっと悲しくなった。

青ちゃんは将来何になりたいのかな。

先生だったら嫌だな。

そしたら僕もいっぱい勉強しなくちゃいけないし。

「せんせーこれもってかえってもいい?」
青ちゃんが国語の先生の何かを手に持って聞いていた。

授業が終わったら。

青ちゃんと一緒に帰ろう。
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授業が終わった。

「あおちゃんいっしょにかえろう」
「いいわよ」

最近の帰り道はいつも夕日で照らされている
「おれんじね。」
夕日の色はオレンジ色
「ねえ、なんでわたしたちのなまえが色のなまえなのかしってる?」
「なんで?」
「せかいがしろくろだからよ。」
「しろくろ?」
「このせかいには色はあってないようなものなんだって。」
「ふーん」
「むかしのひとがみていた色とわたしたちがいまみている色はおなじだけどちがうの。」
「おとなたちがつながれるまえの色?」
「そうよ。」
「だからわたしたちこどもには色のなまえがついてるの。」

「せかいが色をわすれないように。」


文責:ペンギンの唐揚げ

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